ニセモノの街
ニセモノの街で今日もニセモノの朝が来る
ニセモノのニュースがテレビから流れ
ニセモノの朝食を済ませる。
ニセモノの価値のために働き
ニセモノの充実感を得る。
ニセモノの夜が来て
ニセモノの帰路につく。
ニセモノの疲れを癒すため
ニセモノの友人とニセモノの店に入る。
いらっしゃいませ!何名様でしょうか?
2名で!
2名様で!カウンター席へどうぞ。
マスターいつものニセモノください!
あいよ!ニセモノ一丁!
今日のニセモノは新鮮でね!
もちろん国産のホンモノのニセモノですよ。
ここのニセモノはホンモノだ
俺の舌はホンモノのニセモノが大好きだ。
あー、これホンモノが少し混ざってるから
サービスしときました!
いやあ、ありがとう
いただきます!
ホンモノは摂りすぎると体に悪いし
ニセモノの味が落ちちゃうんだよなあ。
マスター、ホンモノとニセモノの境目ってどこなの?
あー?お客さん困るよ。
あんま大きい声で聞くなよ、
ん?ほれ、これホンモノの塊だ。
ホンモノのホンモノだ。
純度70を超えたホンモノは
今じゃ違法だから、他で喋らないでくれよ?
炙ったふりしてナマでイッてみ。
あ、すみません
いただきます。
そのホンモノを口に含んだ瞬間
多幸感に包まれた。
なんでこれが違法なの?
ホンモノの方がいいじゃんか。
さあな、ただニセモノが増え始めた頃から
ホンモノが規制され出したんだ。
国民をダメにしちまうからって。
そんな、それじゃニセモノの為に俺たちは生活しているの?ホンモノも知らずに。
嗚呼、そうだ
ホンモノを知っているのは
今じゃわずかな年寄りか
産まれたての子どもだけだ。
それと好奇心を捨てずに感覚で生きてる
ルールの外側にいる奴らだな。
"向こう側"とか言ってたな。
チッ、誰か通報しやがったな…
赤いサイレンが店の前で止まる。
先程から無言のニセモノの友人を見ると
食事に手をつけていない。
お前か!このクソが!
ガラガラ
ホンモノ所持で逮捕する!
気がつくと4、5人の警官に押さえられ
後頭部を警棒でガチんと殴られた。
っつっ、ゔぁっ!
そのタイミングで目が覚めた。
なんだ、夢かよ。
ん?待てよ。
この現実はホンモノか?
仮にホンモノの現実だとして、
ほんのりとニセモノの匂いがしないか?
ホンモノのホンモノだけ集めて生きたいね。