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      合計

      海へ還ろう

      黒潮町

      黒潮町

      生ぬるいオンショアが吹き始めた

      波はまだカタチを保っていたが

      気持ちのいいところでやめたいなとその時は思った。

      お腹が空いてきたというのも理由の一つだ。

      波に集中出来なくなりだすとケガをする原因にもなる。

      最後の一本を丁寧に乗り

      そのままスープに腹ばいになり砂浜に戻る。

      すでにお腹はぺこぺこを通り越してぺっこぺっこだ。

      だが、サーフィン後の多幸感で全身が満たされているのを感じた。

      着替えるため車に戻り近くの松の木にウェットスーツをぶら下げ腰にタオルを巻いた状態でほうじ茶を飲む。

      同じタイミングで海から上がったおじちゃんと目が合って挨拶。

       

      他愛もない会話。

       

      昨日までちぃさかったんや

      なんともなかったのに

      今日いきなりあがったんや

       

      ここもホンマはいつもなら

      4.5人でピークまわしとんのやで

       

      それが他は今な地形悪くてな

      だからこんなぎょうさんにぎわってんのや

       

      平日なのにや

       

      わしもな30年くらい前に大阪から移住して来てな

       

      こっちで嫁さんもろて

      子どもも4人こさえて

      楽しくやらしてもろてます

       

      定職にもつかんと

      季節限定で漁師やったりやな

      農家やったりしてなあ

       

      家賃も庭付きで2万やで!

      笑うわなあ

      でも20m×20mはあるで

      ささやかでええねん

       

      職場もサーファーばかりやから

      今日波いいなあ、休むぅ?みたいな感じよ

      ぶつかることがほぼ無い

      てか、無いなあ。

       

      食べ物だってな

      魚なんてほぼタダよ

      友だちがくれよるから

       

      あとなここの車見てみい

      全員ドアも閉めんしカギもかけんのや

       

      わるいやつなんていいひんねん

       

      お金をぎょうさん持ちたい言うたら

      この生活は無理やが

       

      気候もええし

      波もええし

      食べ物ある

      おかげさまで子どもたちも元気や

       

      これを幸せって呼ばな

      なんて呼ぶ?

       

      にいちゃんここええで

      ホンマにもう行くんか?

       

      もったいないなあ…

      せめて1か月くらいゆっくりしていったら

      ええのに。

      せめて1週間

       

      次来る時はしばらく住んでまえよ。

       

      今日急に波上がったんわ

      にいちゃんが来たからかもな

      きっとにいちゃん海に口説かれとるで。

       

      シンプルに嬉しかった。

      俺はそういう運を持っているのを自覚している。

       

      ありがとうございます〜

      また来ますね!

      ちなみに今むちゃくちゃお腹空いてて

      なんかごはん食べれる場所近くにありますか?

       

      あーほんなら

      この道ばーっと行って

      キャンプ場通り越してクッと曲がったら

      道の駅みたいなもんあるからそこで500円くらいで朝メシ食えるわ!

       

      んじゃあそこ行きます!

      ありがとうございました!

      ばー行ってクッ!ですね笑

       

      そやそや笑

      ぐばー行ってクゥッや笑

      にいちゃんおもろいな

      またなんか会える気がするわ

       

      ですね!また!

      お元気で!

       

      松の木からウェットスーツを回収し

      俺は言われた通り

      がーっと行ってクッと曲がった。

       

       

       

       

      神様セッション

      神様セッション

      しばらくすると今日のメンバーが揃ったようだ。

       

      約20人ほど。

       

      見た限り俺より年上のサーファーが多い

      日焼けした体に白髪のボウズ頭は

      自分のおじいちゃんを思い出す。

      どこか阿吽像の様な神様感があって体も分厚く逞しい。

      ずっと海にシェイプされ続けて来たのだろう。

       

      そんな中、男か女かわからないくらい華奢で

      色白のロン毛が内股で見ていて気持ちいい脱力したラインを描きまくっていた。

       

      か細い身体のどこから

      そんな馬力が出ているのかわからないくらい

      波に調和し彼は誰よりも波に乗っていた。

       

      幽霊の様に重さを感じさせない

      その乗り方には不気味さすら覚えた。

       

      ごっつい阿吽像の中に

      まるでキリストが迷い込んだ様な絵面に

      つくづくサーファーっておもしれえなあって感じた。

       

      そんな事を考えていると

      自分の目の前にセットが迫って来ている

       

      呼吸を合わせ丁寧に速くパドル

      テイクオフし遥か遠くに気持ちよく運ばれる。

       

      バックサイドは苦手だったはずが

      そんなことは嘘だったかの様に当たり前に乗れた。

       

      苦手ってのは"苦手意識"のことなんだなあ

      つまり思い込みなのだ。

       

      と今降りて来たばかりの感覚を噛み締めながら

      パドルしラインナップに戻ると

       

      皆が褒め称えてくれた。

       

      まるで世界中の神様に褒めてもらえた気分だ。

       

      ありがとう、世界中の神様たち。

      入野海岸

      入野海岸

      まだ薄暗い時間に目を覚ます。

       

      う〜

      車の中で背伸びをする

       

      まだ星がうっすら見える。

       

      時間は5時半

       

      風は吹いていない

       

      なんとなくで車を走らせる

       

      もうナビる必要とか感じていなかった

      自分を信じていた。

       

      あっという間にビーチに着くと

      サーファーが何人かすでに着替えていた。

       

      車を停めてビーチを歩く

      地平線が橙色に縁取られ輝き出すと

      滑らかなウネリもしっかり届いていることに気がつく。

       

      サイズは頭半〜

       

      よっしゃー!

       

      すぐに着替えて海に入る。

       

      水温は温かくサンフルでは少し暑かった。

       

      パドルでラインナップに辿り着く頃に

      ちょうど太陽が昇りだし

      照らされた他のサーファーの顔も

      眩しそうにニヤついていた。

       

      今日もいい日になりそうだ。

      ぽこぺん

      ぽこぺん

      さて、ヒッチハイカーと別れ

      再び1人旅。

       

      さみしさと不安とワクワクが三つ巴状態だ。

       

      また陽が沈んだ。

       

      空は雲一つなく澄んでいた。

       

      お腹が空いたので

      近く 食事 とググり

      1番近かった"ぽこぺん"で食べることに

      スーパーの裏の駐車場に車を停め

       

      程よく食事を済ませてほろ酔いで車に戻る。

       

      シートを倒して視界いっぱいに拡がる星空とにらめっこ。

       

      あーなんだよ、ひとりじゃもったいねえよ

      なんかこう特別な人と見たいよなあ。

       

      中途半端に人と関わったので

      孤独な旅の孤独さに気がついてしまった。

       

      さあ、明日こそやっとサーフィンできるぞ!

      なんの確証もないがもうそんな気がしていた。

       

      目を瞑りあれこれ考えているうちに

      眠りに着いていた。

       

      車で寝るのはこれで何日目だろうか?

      有言実行論

      有言実行論

      そのまま海沿いを気持ちの良い天気のまま進む。

       

      左手にキラキラした海を見ながら

      波に目を光らせ

      右手にはミドリ豊かな山がそびえ

      時おり白装束のお遍路さんとすれ違いながら

      南を目指す。

       

      残念ながら波が綺麗に割れてるところはなかった。

       

      室戸岬あたりで

      諦めついでにヒッチハイカーに尋ねる

       

      なあその美味しいカツオのタタキはどこで食べれんのよ?

       

      明神丸です!マジで美味いですよ!

       

      おし!向かうぞー!

       

      高知に入ってからの海沿いの道は

      全て黄色信号で点滅していた

       

      のどかでいいね、四国ナメてたわ。

       

      あれよあれよとバギーズもゲットし

      明神丸でカツオのタタキを食べ

      満足した我々は海を目指す。

       

      キラキラした海が目に入った瞬間

      お互いにテンションが再び上がる。

       

      おしっ!

      あの辺ではいろう!

       

      はい!

       

      車から降り海に向かい走り出す

      身につけていたものはルパンが不二子を抱く時の様に一瞬で外し海にダイブ!

       

      ヒッチハイカーは笑いながら

      ついてくる

       

      気をつけろ!案外深ぇぞ!

       

      あい!冷た〜い!ほんまや!深い!

       

      散々はしゃぎ切り

      浜辺にいた若い女の子に2人にロックオン。

       

      OK、俺に任せとけ。

       

      あい!

       

      なんやかんやで

      仲良くなりヒッチハイカーを徳島まで乗せてもらえる事になった。

       

      1時間後に戻って来るそうなので

      海を見ながら互いに黄昏る。

       

      そう言えば昨日言ってた事覚えてますか?

       

      ん?

       

      僕が同世代の若い子にヒッチハイクしてもらいたいって言ってたじゃないですか!

      それを叶えてやるって!

       

      ああ、叶ったね

      俺の言霊むちゃくちゃ強ぇんだよね笑

       

      あはははっマジすか?

      しかも女子大生、ばっちり世代です!

      なんかコツありますか?

       

      ん〜強いて言えば

      有言実行を必ずし続ける事かな

       

      と言うと?

       

      有言実行を必ず実行し続けると

      口に出した事を宇宙が勝手に用意してくれるようになる

      これは世界と自分との約束みたいなもんだな

      守り続ける限りは守られる。

       

      おー、なんか急に真面目で説得力ありすぎて

      普通に感動しました。

       

      半分は冗談だけどな笑

      ほら、これやるよ、ヘアゴム。

      俺のパワー注入しといたからこれつけてる間は有言実行し続けろよ!

       

      はい!ありがとうございます!

       

      ほんじゃそろそろ次の町に行くわ!

      日が暮れる前に!

      ちょいちょい生きてるかだけ連絡よこせよ

       

      はい!ありがとうございました!

      宮古島で待っててください!

      ヒッチハイクで絶対行きます!

       

      あっ!言ったな?

      有言実行だぞ?

       

      わかってますよ!

       

      それでは!宮古島で待ってるわ

      またね〜!

       

      再び1人で走り出す

      サイドミラーで見えなくなるまで手を振るヒッチハイカーが見える。

       

      まさか1ヶ月半後に本当に宮古島まで

      ヒッチハイクして来るとはこの時は半分信じてなかったんだけど。

       

      縁て凄えね。

      生見海岸

      生見海岸

      夜明け前に目を覚ます。

      まだ星が出ていた。

       

      おはよう!寝れた?

      サーフィンしたいから生見海岸向かうぜ!

       

      おはようございます

      ありがとうございます。

       

      生見海岸を目指して車を走らせる。

      サーフィン前のワクワクと仲間が増えたワクワクとで朝からテンションがいつもより高かった。

       

      生見海岸に着く。

      まだ太陽は出ていない。

      駐車場は有料だった。

      他にもサーファーが何人かいる。

       

      防波堤を登り海を見渡すと水平線からちょうど太陽が顔を出す。

       

      もうすでに海に入り波待ちをしているのが23人。

       

      しかし波はイマイチだ。

      だが朝陽に照らされた景色全てが絵になっていた。

       

      入るんですか?

       

      ヒッチハイカーが聞いてくる。

       

      いやあ、微妙だから入らないかな

      でもせっかくだから散歩しようか。

       

      2人で波打ち際を5分ほど散歩し車に戻る。

       

      海沿い走ってれば波あるかもだから

      このまま海沿いを南に向かうぜ!

       

      はい!

       

      という事で更に南へ。

       

      通り過ぎる海沿いの町並みは

      初めて来るのになぜかどこか懐かしい気持ちになった。

       

      そして何かに導かれている実感が湧いてきた。

       

      きっとこれが俺の人生なんだろうな。

       

      とりあえず昨日お風呂入れなかったし

      海で水でも浴びるか?

      てか、ヒッチハイカーとかって風呂どうしてんの?

       

      そうですね〜

      4日前に四万十川で水浴びました!

       

      え!笑 ワイルド!

       

      大丈夫ですか?僕くさかったりします?

       

      いや、匂いは大丈夫だけど

      髪がちょっとだけオイリーだね。

       

      海入りたいんですけど

      僕海パンないんですよね〜

       

      おっしゃっ!

      それじゃ海パンどっかで買って

      ついでに朝飯兼お昼ご飯食べて海で水浴びしようか。

       

      え〜最高です!

      日本一周するならやっぱ海パン必要ですよね?

      海パン何履いてますか?

       

      バギーズだよ、パタゴニアの!

      とりあえずバギーズあればいいかなあ

      ノーパンで過ごせるし。

       

      んじゃそれ買います!

      10月後半ですけど置いてますかね?

       

      OKんじゃこのまま海沿いを南下しながら

      パタゴニア目指そう!

      ググって!ナビ頼むわ!

       

      分かりました!

      お!ナビったらパタゴニアの近くに

      僕が最近食べた最強に美味しかったカツオのタタキのお店ありますよ!

       

      OK!んじゃあ昼飯はカツオのタタキじゃ!

       

      いえー!最高ですね!

       

      ふぅー!だって俺たちは"自由"だしな!

       

      色々なことがとんとん拍子で決まり

      お互い気持ちの良い奇声を上げる。

       

      わっはははっ!

       

      笑いが込み上げる

      助手席からも笑い声が聞こえる。

       

      だって俺たちは"自由"だしな!かあ

      我ながら気持ちの良いセリフだな。

       

      また笑いが込み上げた。