ロードオブザリング
おばあちゃん!
その指輪イカしてるね!
おぉ、わかるかい?
この指輪はねえ
23歳の夏の終わりに
波打ち際を歩いていたらね
なにかキラキラしてたのよ
砂から半分だけ出ててね
それを拾って、波で洗ってね
なんとなくハメたら抜けなくなっちゃって
70年ッッッ!!!キャハッ
キャハキャハハッッッ!
70年!?
てことはおばあちゃん93なの?
ずいぶん元気だね!
長生きの秘訣は何?
そうよ、94かもしれないし
95だったかもしれないキャハハ!
だいたいそのくらいね
秘訣はね、感謝!キャハハ
腰は少し曲がってしまったけどね
どこも痛い所はないし
この通り動いてくれるから
自分の体に感謝してるの!キャハキャハハ!
なーるほどね
てか、ばあちゃんむちゃくちゃ笑うね
笑顔がステキで可愛いいわ!
あら、そう?
いっぱいお話を聞いてくれてありがとうね
あなた、いい男だわ
私が70歳若かったら放っておかないわよ
そこにあるもの好きなだけ持っていっていいわよ、キャハハッッッキャハ!
いや、悪いよ
なにもいらないよ。
いいーの!
どうせ、売るくらい余ってるんだから
そこで待ってなさい!
据え膳食わぬわ男の恥よ、キャハハ
しばらくするとおばあちゃんは
ビニール袋に
焼きとうもろこし、焼きそば
たこ焼き、いかぽっぽ、玉こんにゃく
缶ビール2缶をいれて
俺に渡してウインクしてきた。
あー、こんなに!
ありがとう!いただきます!
いいのよ!キャハハッッッキャハ
ばあちゃん、また会おうね!
長生きしてね!
キャハハ、大丈夫よ
私の生命線は肘の裏まであるんだから、
ほら!
2回殺されても死なないわよ、キャハハ
あともう一つ
長生きの秘訣はね、コレ!
さっきから飲んでいたグラスを俺に見せる
ん?水?
キャハハッッッ、違うの
焼酎ッ!朝からこれをヤるの!
キャハキャハハッッッ!
さっきから水の様に飲んでいたのは
焼酎だった。
すげえ、ばあちゃんだ。
ばあちゃんと別れ
浜を横断し防波堤に腰掛け海を見渡す。
とりあえずもらったものを食べなくては
全てコンクリートに並べ
沈む夕日を眺めながら缶ビールを開ける。
いただきますッッッ!
焼きそばを食べようとしたら箸がない
お、おばあちゃ〜ん…!
仕方ないので近くに落ちていた流木の皮をむいて箸にした。
にしても、日が沈むのが早くなったなあ。
また来年も元気で会えたらいいなあ。
なんだかおセンチな気分になり、涙ぐむ。
まだ少し熱い砂の上を歩く。
涙乾かす、風を待つ。