布岬
こんにちは〜
お兄さん今日波どうだった?
どうも〜
朝イチから入ってたんですけど
昼前までは良かったですよ!
たしかに
風強くなって来たなあ
でもこの向きなら"あそこ"なら
風かわして完璧なはず。
え?どこですか?
お兄さんスケートしてるの見てたけど
グーフィーでしょ?
そしたら"あそこ"は天国だね。
"あそこ"とは?
あー、布!布知らない?
ローカルルールが厳しいし
昔なんか事件にまで発展しちゃったんだけど
あそこはグーフィー天国だよ!
ここを抜けてもうちょい南に向かったところ!
布岬でナビに入れたら着くはず!
ありがとうございます!
行ってみますね!
はいよ!気をつけて〜!
と送り出され
ほらな!俺の人生はこんな風にデザインされているんだなあとか都合よく解釈して
今さっき知り得たばかりの布というポイントへ向かう。
海沿いの漁師町だった。
どこか昭和や平成初期を感じさせる町並み。
車を止めて防波堤を上り見渡す
お〜…❤︎
思わず吐息と声が漏れる
岬の端から段々に
綺麗なグーフィーが等間隔で割れていた。
サーファーは15人程度
奥に行くほど板は短く。
手前の方でロングボーダーが楽しそうにステップを踏んでいた。
ハイエースから降りて来た2人のサーファーに声をかけられる。
お兄さん入るの?
もちろん!
入らないんですか?
わしら今日大阪から来て
寄ってみたんだけどローカル怖くて
ちょっと見学しとこうかな?って2人で今話してたとこなんですわ。な!?
もう片方もうなずく。
ええ〜、もったいない!
俺は入りますよ!
だってあの岬の奥のバチバチに決めてる人とか
絶対猛者やで、怖いわあ〜
俺は入ります!
でわ!
生乾きのウェットスーツを再び着直し
誰に気を使って生きてんねん!
自分の人生やろ!とか思いながら
玉砂利の浜辺を歩きサンダルを脱いで入水。
四方を山で囲まれて
傾き出した太陽が水面を金色に光らせていた。
あー最高だ。
朝から大好きなサーフィンをして
美味しいご飯で腹を満たして
また好きなスケートをして
そんでまた最高なシチュエーションでサーフィンが出来てる。
思わず無意識に合掌していた。
特に何も言われる事なく
何本もいい波に乗り。
潮が満ちて波が小さくなって来たタイミングで
先に入っていたサーファーは上がっていった。
それと入れ替わりでさっきのハイエース大阪2人組もパドルアウトして来た。
俺はニヤついた。
あちらも笑顔で会釈。
そしてこのタイミングで
おそらく漁師町に住む小学生2人が
おそらく親のミッドレングスでパドルアウトして来た。
リーシュもしていない。
小さい波で何度でもテイクオフし
楽しそうに波に乗る。
上手く乗れた時には
ガッツポーズしたり
時にはピースしたり
オリジナルのダンスをしたり。
金色に輝く水面に
2人のシルエットが楽しそうに踊る。
やがて太陽が山に隠れ
5時のチャイムが鳴ると
おそらく兄の方が海から上がる。
弟はどうやら"もう一本"乗りたいらしい。
兄が指笛で弟を呼ぶ。
弟は指を一本立て"もう一本"をせがむが
兄がいいから上がれとジェスチャーして
弟はしぶしぶ上がっていった。
2人の姿やライフスタイルを見て
俺は羨ましく感じた。
生活の中にサーフィンがあることと
兄弟愛。遊び心の解放。その他全てに。
自分も"もう一本"を待っていると
岬の奥からパドルで帰って来ている人のシルエットが見えた。バチバチにかましていた猛者だ。
2人組のせいでほんの気持ちビビっていたのだがパドルで帰って来たのは女子中学生または女子高生だった。
俺は笑った。
勝手な主観で必要以上に何かを怖がってしまうことってあるよな。
いかんせん、怖がっているものは手に入らない。
今日の教訓ですね。
小さい波に乗り浜辺に戻ると
サンダルがギリギリ流れそうになっていた。
サンダルを履き直し海に向かい一礼。
ありがとう、布岬!
さ、次はどこへ行こうか。