トレモロ
夜中にふと目が覚める。
あ!夢じゃない!
日常とされるものから離れたため
現実味がないのだ。
静かに聞こえるモーター音に揺られながら
窓を覗くと微かに見える漆黒の海原が
神秘的に見えた。
海も寝るんだなあ
よくわからない独り言をつぶやきながら
なんとなく部屋を出る。
起きてる人は誰もいなかった。
あれ?やっぱ夢かな?
星綺麗なんじゃないかな?
ふと思いつき
階段を3階分ほど登り甲板に出る。
誰もいないけど
出ても大丈夫だよ、な?出ちゃお❤︎
ドア開いてるし😏
甲板に出ると星が綺麗だった。
というよりかは銀河そのものが覆いかぶさって来た。
あぁ今、口説きたいなぁ
このシチュエーションで落ちないやつは
いないんじゃないかな
どんなに下品なことを言っても
ロマンチックにしかならねえよ。
なのに1人だ。
なので俺は夜空を口説いた。
甲板に大の字に寝そべり
両手を広げて夜空を抱きしめる。
なあなあ、夜空あ
俺は今お前を独り占めしてんぞ。
綺麗だなあ、景気付けに
ほんのちょっと星を流し…
ぴゅっ
ひゅいっ!
しゅッッッ!
星が立て続けに3つ流れ落ちる。
おいおい、まだ全部言ってないぞ!
ワハハハっ!でも、ありがとう!
暗い海の上を進む船は止まっているのか
進んでいるのかわからなかった。
進行方向から吹く風が唯一
進んでることを教えてくれていた。
今の俺の人生みたいだなあ〜
なあ夜空よ
怖いくらいに綺麗だなあ
もしかしたら人生も
ちょっと怖いくらいが綺麗なんかもな。
ぴゅっ
ひゅいっ!
しゅッッッ!
応えるようにまた星が流れた。