打ち上げ花火、下から見るか、横から見るか。
20:20
よしっ行くか
おう!
この季節には珍しくフルスーツに着替える。
打ち上げ花火をサーフボードの上で
海に浮かびながら見るためだ。
警備員にバレない様に少し遠いところから
パドルアウトする。
俺が先頭を切る
波はほぼ無いに等しい。
夜をそのまま溶かした様なビロードの海は
吸い込まれそうで1人では少し気が引けるが
暗闇の中でも仲間のニヤニヤとワクワクが伝わってくるから怖くない。
ズドッ…
ヒュ〜ッッッ…ッ
ドンッ!…パパーッン‼︎‼︎
むちゃくちゃ綺麗だ
闇夜に飛び散る色彩豊かな光の粒を
海が大きな鏡になり映して
まるで花火の中に浮いているようだ。
花火はどんどん勢いを増していく。
花火が上がるたび照らされる仲間の顔も
イキイキしていて俺は大満足だ。
そろそろラストかな?
花火師がご乱心か?と疑うほど
間髪入れずに打ち上がる。
ほんの数秒、一刹那のタメの後
今までのより高く高く細い光が昇って行く。
ひゅ〜〜〜〜〜しゅっ!
カッ!
どパパパパパパパサパサっっっ
しゃぁあぁあぁあぁあぁ〜ッッッ
だばばばばばばばばばばッ
しゃぁあぁあぁあぁあぁ〜
だぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼッッ
しゃぁあぁあぁあぁあぁ〜ッ
大輪の枝垂れ柳が空も海も埋める。
ふぅ、俺これが1番好きなんだよね〜
自分もッス
俺は〜連チャンのあの赤いやつかなあ
俺も最後のが好い!
各々想い想いに感想を述べる。
で、みんなどうだった?
めためた最高!
だろ?まあ、俺といたらいつでも最高よ
んじゃ戻るか。
砂浜に戻り着替え焚き火を囲む。
乾杯!
星がよく見えた、今日は新月だ。
星が流れる、波の音と海風もちょうどいい。
まるで夢見たいだな
シチュエーションに酔う。
俺達が見ている景色が夢だとしたら
最高にアホらしくて笑えて
スリル満点の夢にしよう
一瞬のまやかしだとしても
錯覚や幻想だとしても
信じていたいと思える何かを見つけたんです この夏はきっと終わらないって
なんとなくそう思った。
永遠よりほんの少しだけ長く
こうしていれたらなあ
気づくとテントに入らず
焚き火の横で寝落ちしていた。
あれ?どこからが夢だったんだろう。
現実と夢との境を曖昧にしてしまうような
そんな夜があといくつ待っているのだろう
そんな切なくて淡い疑問も
懐かしい人肌のような夜風にさらわれて
波音にまぎれ夏の真ん中に溶けていった。
あ、ちくしょう
思い出の数だけ蚊に刺されてやがる💢