温かい山菜蕎麦を食べ終え
やっぱキノコって最強だなあ〜…
てか山菜ってやばいわあ…
と腹をさすりながら小さく独り言をつぶやき暖簾をくぐり商店街に出てすぐに
近くできゃっ!と小さい悲鳴が聞こえた。
ドレス姿の女性が転んでいる。
大丈夫か?
お姉さん、ヒールが片方折れてるぞ。
ありがとう!大丈夫!
知ってるう、折れたあ
もうむちゃくちゃだるいんだけど
眠いし!
少し酔っているようだ。
ドレス似合ってるね
なんか海みたいな色で俺好みだ
そりゃあ、だるいわなあ
眠いのは知らん。
ありがとう
そう、今日友だちの結婚式だったの
ヒールも久々に履いたし
2次会のビンゴでこれ当たってさ
これ地味に重くてバランス崩して転んじゃった。
それなに?
プラネタリウム!?だっけ?
なんか壁とかに星写すやつ。
いいじゃん、プラネタリウム!
ほれ!
おぶされ
車にビーサンあるからそれ貸すわ
そこまでおんぶしてやるよ。
え、やさしい!
いいの?
のむをの半分はやさしさでできてます!
いいよ!早よ、おぶされよ
この体勢地味にキツい!
はい、お願いしまーす!
あと今から貸すサンダルは
18才の頃にユニクロで500円で買った安物だが俺と10年以上色々な場所を旅してきた伝説のサンダルだから借りパクはすんなよ。
安っ!
それを10年以上履いてるってやばくない?
もはやヴィンテージじゃん!
そう、だがミゾが無くなって
雨の日コンビニとかで滑りまくって死にそうになるのでセカンドサンダルとして車に積んであるんよ。
セカンドサンダルて初めて聞いたわ笑
セカンドカー的な?
そう、何かあった時用のスペア!
着いたよ。
車に着きサンダルを貸す。
ありがとうございます!
わぁ本当だあミゾがなーい
こりゃ滑るわ笑
そーいえば名前なんての?
あ!言ってなかったね!
てか、よく名前知らない女の子こんな距離おんぶしたね。
なあ、我ながらかっこいいわ
惚れたろ?
ヒーローだったわ
それはまだ!
お兄さんなんか訛ってるね
どこから来たの?
まだってことはもう惚れ始まってるなあ
俺ってば罪な男や、宮城!
うるさいんだけど?笑
仕事?どっか泊まってるの?
いや遊びよ、プー太郎だし!
これ!この車が本日の宿よ。
ドヤ顔で言うセリフじゃなくない?
え!寒くないの?
しかもサーフィン?の板とかもあって
寝れなそうじゃん。
んだ
せまいよ。
さっきよりもドヤ顔で答える。
もう!笑なんなのそのドヤ顔笑えてきた
目もキラキラしてるしなんなん?笑
私ん家すぐそこなんだけど
お礼に泊めてあげるよ!
え?いいの?俺が殺人鬼とかだったらどうするの?
ヒールよ、よくぞ折れてくれた感謝。
えー、んじゃやめとく?
ちょいちょい
それは良くないぞ
お気に入りのヒールだったんだから
いや嘘!虫も殺せません。
でもヒール折れたおかげで
俺に会えたじゃんか、プライスレス!
お礼にとコンビニでビールやらツマミやら買ってもらいアパートに向かう。
ヒールもコンビニのゴミ箱に突っ込み
なぜか2人で手を合わす
ヒールさん成仏してください!
折れてくれてありがとう!
おじゃましまーす!
あ!ちょっと洗濯物隠してくるから待ってて!
はい、どうぞ!
なかなかいい匂いのする部屋だった。
おつまみ足りないよね?
ちょっと待ってと言うと
つまみに海鮮たっぷりのアヒージョが出てきた。
うま!むちゃくちゃ美味しいじゃん
エビ大好きなんだよねえ、俺。
えへへ、ありがとう〜
お互い酔いも周り
私先にシャワーあびてくるねえ
と彼女は風呂場へ消えて行った
あいよ〜
何かを察知した俺は
勝手にプラネタリウムを箱からだし
部屋を暗くしスイッチを入れる。
おお、なんかすげえなあ
雰囲気ばっちしじゃねえかと
見惚れていると知らない間に
俺の意識は部屋一面に広がる銀河へと吸い込まれていった。
朝方新聞配達のカブの音で目を覚まして
勝手にシャワーを浴びて歯磨きを済ませる。
あちゃあ、お酒飲んで先に寝ちゃうのは
今年で何回目だろうか、バカタレ!
学べよ、俺!と心で呟きながら
自分へビンタする。
そのビンタの音で起こしてしまった。
おはよう…起きるの早くない?
寒いっしょ、こっちおいでよ。
俺は無言で敬礼をすると
掛け布団をドルフィンでかわし
ベッドの上へとパドルアウトした。
常夜灯に照らされた
鈍いオレンジ色したシーツのシワが
朝焼けに染まるうねりに見えた。